実家に帰ってふと思い出した、中古物件を見送った出来事。
私の実家の近くに、とある姉妹の家がありました。
町内でも美人姉妹で有名な、目と鼻の先にある弟の友人宅です。
しかし、もう今は誰も住んでいません。
その家を見ると、ある出来事が蘇り、なんだかいつも胸が締め付けられるのです。
優しく面倒見の良いお姉ちゃんと、聡明で可愛らしい妹さん。
お母さんも、よく私の母と行き来のある方でしたが、穏やかで優しく、側から見たら、まるで絵に描いたような幸せそうな家族という感じでした。
そんな姉妹の家が建ったのは、私達が小学校高学年くらいのときでしょうか。
住み心地の良さそうな、あたたかな雰囲気の素敵な家でした。
しかし、住んで間も無くして、その姉妹の家は人手に渡ることになったのです。
それも、同じ学校に通う同級生宅に買い取られるというものでした。
内情を聞けば、お父さんがある事実から働けなくなり、泣く泣く手放すことになったとか。
お姉ちゃんは、家を手放すのが嫌で、お母さんに「家を手放したくない」とわんわんと泣き縋ったといいます。
自分が今まで住んでいた大好きな家が他の人に渡ってしまう、それも顔馴染みの同級生が住むことにとても抵抗を覚えたようです。
あのいつも大らかなお姉ちゃんが取り乱すほどだったのか・・とお姉ちゃんの嘆き悲しむ姿を想像して、私も子供ながらに胸が詰まったのを覚えています。
しかし、妹さんは冷静だったそうです。
お母さんは「なぜ、あなたは泣かないの?」と聞くと
「私が泣くとお母さんが悲しむからだよ」と言う、とても優しく芯の強い子でした。
やむを得ない事情というよりは、どちらかと言うと、お父さんの惰性による事情のようで、その後、ご夫婦は離婚。
お母さんは、昼夜働いて必死で子供達を育てていました。
しかし、そんな状況下でも、お母さんと姉妹は、以前と変わらず、身を寄せ合って仲良く生活していたと思います。
お母さんが愛情いっぱい育ててくれたおかげで、2人の姉妹の笑顔が曇ることはなく、2人とも素直で真っ直ぐ自分の人生を歩んで行ったように思います。
随分長いこと働き詰めだった姉妹のお母さんは、身体に支障をきたさないか、周りも心配していました。
悪い予想はそのまま現実のものとなり、姉妹のお母さんの体を蝕んでいきました。
お姉ちゃんがご結婚なさって、あと1ヶ月で初孫が産まれるというタイミングだったと思います。
「もう少しだから、頑張りなさい」と、周りが寄り添い声をかけるも虚しく、初孫に会う夢は叶わず、長い眠りにつきました。
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そんな思い出が蘇ったのは、私が家探しをしていた時のこと
ある中古物件を見に行った時です。
主人が見つけてきた一軒家。まだ真新しく、室内も綺麗。立地も良好。「旗竿地」なのが個人的に最初は気になっていたのですが、敷地延長から延びる庭が素敵で見た瞬間に「いいな」と思いました。
部屋の隅に元住人であると思われる男性がポツンと1人、不動産屋の方の影に隠れるように立っていました。
「どうぞ、ゆっくり見て行って下さい」とその男性は愛想良く話しかけてくれ、また隅に籠るように背を向けました。
主人が不動産屋の方に「何故、この家を手放すことにしたんですか?」とやんわり質問している声が聞こえてきました。
不動産屋の方は言いました。
「えぇ、実は…」
(ひとまず、長いのでこの辺で)つづく。
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