フランソワーズ・サガン未発表作品「打ちのめされた心は」

私の束の間の夏休み。

久しぶりの1人外出で本屋へ。

仏検対策本だけ購入して帰るつもりが、

時間に余裕があるのをいいことに、

ふら〜っと色んなジャンルの本棚を

ひと通り見て歩いていると

目に飛び込んできた

フランソワーズ・サガンの未発表作品

「打ちのめされた心は」

サガンの死後、見つかった原稿だそうです。

完全なる状態で保管されていたのではなく、

それぞれの原稿は、

元々別々の場所で見つかったようで、

それらが1編の小説だと分かるまでにも

時間を要したのだとか。

断片的な部分は手を加えなければならず

日の目を見るまでおよそ10年の歳月を経て、

息子のドニ・ウェストフ氏によって

長い眠りから覚め、息を吹き返した本作。

サガンの小説のテーマは「愛と孤独」

個人的な感想に過ぎませんが、

サガンの作風と言えば

「物憂さと甘さ」の一言に尽きます。

“物憂さと甘さとがつきまとって離れないこの見知らぬ感情に…”

と、処女作「悲しみよこんにちは」の冒頭で

既に以後に及ぶ作風を紐付けられているのは

天才的というか

(サガンも意図してはいなかったかもしれないけれど…)

モーリヤックが

“魅力的な小悪魔”と

絶賛したのも思わず納得してしまいます。

作品もさることながら、

そのセンセーショナルな存在感は、

身近なジャーナリストから

“文学界のマドモアゼル・シャネル”とも称されたサガン。

日本人が思い描くフランス人のイメージはサガンによるもの

なんて言われていたりしますが、

サガンはそれを文章の音によって

巧みに伝えてくれているように感じられます。

朝吹登水子さんや、河野万里子さんの秀逸な翻訳による部分も

大いにありますが

物語の内容や、結末というより、

作品全体のリズムやトーン、

レトリックによってフランスっぽさのようなものを

感じさせてくれるのはサガン作品の特徴の1つのように思います。

まだ読み始めたばかりですが、

“La laisse”(愛は束縛)以来の河野万里子さんの翻訳

読み進めるのが楽しみです。

Bitly

コメント